B2Bコラム

営業の受注率を上げる方法の選び方|研修・AIツール・個別診断、どれを選ぶべきか

営業組織の受注率を上げたいとき、選択肢は大きく3つあります。営業研修AI商談解析ツール、そして商談の個別診断です。この記事では、それぞれが解決できること・できないことを正直に整理します。結論を先に言えば、組織の課題が「知識不足」なら研修、「振り返りの仕組みがない」ならツール、「エースの商談は決まるのに他の人は決まらない=再現できない」なら個別診断が向いています。自社がどこにいるかを見極めるための記事です。

1. まず、あなたの組織の課題はどれですか

営業部長が「受注率を上げたい」と言うとき、その裏にある本当の課題は、たいてい次の3つのどれかです。

  • 課題A:知識・型を全員が持っていない——新人が多い、商材が変わった、そもそもトークの型が言語化されていない
  • 課題B:何が起きているか見えない——商談がブラックボックスで、失注の理由も、エースが何をしているのかも分からない
  • 課題C:エースは決まるのに、他の人が再現できない——型は共有したはずなのに、同じ台本を使っても人によって結果が違う

この3つは、効く打ち手がまったく違います。順番に見ていきます。

2. 3つの選択肢の比較

選択肢 得意なこと 苦手なこと 向いている課題
営業研修 知識・型を全員に一度に配る。士気を上げる 実施後に形が残らない。自社の実際の商談は診ない。一般論に留まる 課題A(知識・型の不足)
AI商談解析ツール 全商談を自動で記録・数値化。話速・沈黙・トーク比率の可視化 数値は出すが「どう直すか」の台本は出ない。数値に表れない差は捉えられない 課題B(可視化の不足)
商談の個別診断 自社の実際の商談を診て、改善台本まで返す。数値の外側(間・立て・声色)も診る 全商談を常時カバーはできない(サンプル診断)。一度に大人数は難しい 課題C(再現性の不足)

研修とツールは、否定するものではありません。知識が足りなければ研修は効きますし、記録が無ければツールは前進です。ただ、課題Cだけは、この2つでは解けません。理由を次に書きます。

3. なぜ「同じ台本」で差がつくのか

課題Cが厄介なのは、「型は共有済み」なのに結果が違う点です。トークスクリプトは全員が同じものを持っている。それなのに、エースは決まり、他の人は決まらない。

答えは、勝敗を分けているものが台本に書かれていないからです。

私は営業組織の商談を診断する仕事をしています。エースの商談と、決まらない人の商談を比べると、話している言葉はほとんど同じことが少なくありません。違うのは、言葉と言葉の「間」に何が起きているか——どの一言の前で速度を落とすか、価格を言った後にどれだけ黙れるか、相手の反応をどう受け取るか。この層は、スクリプトの外側にあります。

先日、日本最高峰のピッチコンテストの優勝プレゼンを音声波形から解析したところ、優勝者は「5年後の550億円」と言い切った直後に1.6秒黙っていました(実測の詳細はこちら)。同じ原稿を棒読みした人と、この人を分けたのは、原稿ではありません。原稿には書かれていない「地形」です。

商談も同じです。だから課題Cには、自社の実際の商談を診て、台本に書かれていない層まで含めて「どう直すか」を返す打ち手が要ります。それが個別診断です。

4. 私たちが診断でやっていること

私は元・舞台俳優として10年以上、年間112本の舞台に立ち、その後は営業組織の現場で、離職率80%だった組織を退職者1名まで改善し、前年比188%の受注成果を出す過程で、営業の型化に取り組んできました。俳優の技術と営業の実務、その両方から商談を診ます。

具体的に何を診るのか。総合指標として使っているのが「商談再現性スコア」です。これは非言語(間・立て・抑揚・緩急)だけでなく、イシューの設定や問いの質、台本の構成といった補助軸まで含めて、その商談の勝ち筋を別の人が再現できる度合いを採点するものです。

そして、私の現場での指導は、たとえばこういうものです。

台本の勝負所は、台詞ではなく括弧の中にあります。私が現場で書いてきた営業スクリプトには、台詞と同じ粒度で、括弧書きの指示が入っています。金額を言う直前の行にはこうあります——「ちょっとだけ間。ここで落ちる人は落ちる。自信を持って溜める」。金額を言った直後の行には「少し間。ビビらない、ビビらない、ビビらない」。決まる商談と決まらない商談を分けているのは、この括弧の中身です。台本を配るだけでは、ここは伝わりません。

指導は、商談が動いているその時間の中でしか効かない瞬間があります。商談を横でモニタリングしながら、送る言葉は短い——「喋りすぎ。相手のターンを潰している」。返ってくるのは「落ち着く」の一言。数分後、同じ商談の中で本人が立て直します。研修室のロールプレイでは再現できない、生きた商談の中での微調整。これが再現性を組織に移植していく実務です。

5. 指導を受けた営業メンバーの声

指導を受けた営業メンバーの声(本人許諾済み・個人と所属が特定されない形で掲載しています)

Uさん(27歳・フィールドセールス/元飲食業)
「以前は先方の課題特定ができず、薄いヒアリングばかりでクロージングまで辿り着けませんでした。良いことは言えているはずなのに『勉強になりました』で終わってしまう。指導で一番残っているのは『先方が”コストに感じていること”を減らす話もしなければいけない』という一言です。受注率が10%から50%まで上がり、先方から『どうすれば業績が伸びますか?』と聞かれるようになりました」

Yさん(28歳・フィールドセールス/元不動産セールス)
「クライアントの本音と建前が分からず、質問を直接的に受け取って回答していました。一番残っているのは『あなたは何をしたいの?』という一言です。自分では方向が合っているつもりが、違う方を向いていたことに気づかされました。今は、数字ではなく”価値”が理由で受注するケースが増えました」

Kさん(37歳・フィールドセールス/元建設業)
「『今やるべき理由』を訴求できず即決が取れなかった私に、指導は『相手のイシューを仮説立てること』でした。月入金1,300万を達成しました」

3名とも、営業の前職は飲食・不動産・建設とバラバラです。特定の才能ではなく、型として移植できるからこそ、異なる背景の人に同じ成果が出ています。これが再現性という言葉の意味です。

6. どの選択肢を選ぶべきか(正直な結論)

  • 知識・型がそもそも無い組織は、まず研修や書籍で土台を作るのが先です。いきなり個別診断をしても、直す前の型がありません
  • 商談の記録すら残っていない組織は、まずAI解析ツールで可視化から始めるのが合理的です
  • 型は配ったのに再現できない組織——ここが、個別診断の出番です。特に「エース依存から抜けたい」「決裁者相手の大型商談を落とせない」という課題なら、実際の商談を診るのが最短です

商談の個別診断サービス「商談ドック」の中身は、商談ドックとはで説明しています。今使っているツールがある方は、その数値の「外側」を診る用途で併用できます(AI商談解析ツールとの違いはこちら)。

よくある質問

Q. 営業研修を何度もやりましたが、受注率が変わりません。なぜですか。
A. 研修が扱うのは「何を話すか」です。しかし、決まる商談と決まらない商談の差は、多くの場合「話さない時間の使い方」や「相手の反応の受け取り方」といった、台本の外側にあります。研修で土台を作った後、実際の商談を診て個別に直す工程を挟むと、変化が出やすくなります。

Q. 非言語というと感覚論に聞こえます。教えられるものなのですか。
A. 非言語は、教わる側にとって最も「分かりにくい」領域です。感覚の世界だからです。だからこそ私の指導は、腹落ちするまで、例えを変え、角度を変えながら言い続けます。その人に刺さる言語が見つかるまで。「商談再現性スコア」という計測指標を作ったのも、この分かりにくさを、数字という共通言語に変えるためです。感覚を、再現できる技術に翻訳する——それが仕事です。

Q. 価格提示のあと、相手に「高い」と言われます。どうすればいいですか。
A. まず、黙ってください。相手が自分の言葉で感情を言語化してくるのを待ちます。そして「高い」という反応を、失注のサインだと思わないことです。それは多くの場合、金額を超えるメリットを探す前の、怖さからくる生理反応です。むしろ、もしそこで本当に落ちてしまうなら、疑うべきはその手前——価値の合意ができていたか、です。「高い」の一言は死因ではなく、死亡時刻にすぎません。本当の失注は、もっと前で起きています。私たちの診断が商談全体をタイムラインで診るのは、この「本当の失注ポイント」を特定するためです。

Q. AI解析ツールをすでに導入しています。個別診断と両方必要ですか。
A. 役割が違うので、併用が最も効きます。ツールは全商談を常時記録する「健康診断のモニタリング」、個別診断は数値の外側まで診る「精密検査」です。ツールで異常値(沈黙が消えた等)を検知し、その商談を個別診断にかける、という使い分けができます。

Q. 完全にオンラインで完結しますか。忙しくて時間が取れません。
A. 商談録画をお預かりして診断レポートと改善台本をお返しする形なので、打ち合わせなしでも成立します。まずは無料のセルフ診断(10問・3分)で、自社の商談の傾向を確認するところから始められます。

Q. 診断を受ける前に、まず何から始めればいいですか。
A. 自社の商談を1本録画し、話した内容ではなく「価格を言った後、何秒黙れているか」だけを見返してみてください。多くの場合、1秒も持たずに喋り始めているはずです。そこに気づくだけでも、変化の入り口になります。


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この記事を書いた人

まるお(MARUO ACT 運営者/裏の演出家)

元・舞台俳優として10年以上・年間112本の舞台に立つも、下半身不随の危機(椎間板ヘルニア等)で舞台を降板。「障がい者と本気の舞台を創る」という夢の実現に向けビジネスへ転身。大手営業組織で離職率80%の組織を退職者1名に改善し、前年比188%UPの受注成果を実現。現在は「裏の演出家(非言語セールスイネーブルメント)」として、俳優の非言語技術と営業の型化を、商談の現場へ提供しています。

プロフィール詳細

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